f_lseek

ファイルのリード/ライト ポインタを移動します。また、高速シーク機能使用時にはCLMT(後述)の作成にも使用します。

FRESULT f_lseek (
  FIL* fp,      /* [IN] ファイル オブジェクト構造体へのポインタ */
  FSIZE_t ofs   /* [IN] 移動先オフセット */
);

引数

fp
対象となるファイル オブジェクト構造体へのポインタを指定します。
ofs
移動先のオフセット(リード/ライト ポインタ)値。ファイル先頭からのオフセットをバイト単位で指定します。データ型FSIZE_tは、DWORD(32ビット)またはQWORD(64ビット)のエリアスで、exFATサポートの有無により切り替わります。

戻り値

FR_OK, FR_DISK_ERR, FR_INT_ERR, FR_INVALID_OBJECT, FR_TIMEOUT, FR_NOT_ENOUGH_CORE

解説

各ファイル オブジェクトが持つリード/ライト ポインタは、次に読み出し・書き込みされるバイトのオフセットを保持し、読み書きされただけ進みます。この関数は、ファイルへの読み書きを行わずにリード/ライト ポインタのみ移動します。

書き込みモードでファイル サイズより大きな値を指定すると、そこまでファイル サイズが拡張されますが、拡張された部分のデータは未定義となります。データを遅延無く高速に書き込みたいときは、予めこの関数で必要なサイズまでファイル サイズを拡張しておくと良いでしょう。ファイルに連続したデータ領域を割り当てる必要があるときは、f_expand関数を使用してください。f_lseek関数が正常終了したあとは、リード/ライト ポインタが正しく移動したかチェックするべきです。リード/ライト ポインタが指定より小さいときは、次の原因が考えられます。

高速シーク モードは、ファイルのクラスタ配置情報(CLMT)をメモリ上に保持しておくことにより、FATにアクセスすることなく後方シークやロング シークを高速に行う機能で、シーク動作のほかf_read/f_wtite関数の動作にも適用されます。ファイルが高速シーク モードの間はf_wtite/f_lseek関数によるファイル サイズの拡張はできません。

高速シーク モードは、ファイル オブジェクトのメンバcltbl(f_open関数でNULLになる)にNULL以外を設定したとき有効になるので、まずCLMTを作成しておく必要があります。これを作成するには、まずCLMT格納バッファ(DWORD型配列)を準備し、cltblにそのポインタをセットします。そして、配列の先頭要素にその配列のサイズ(要素数)を入れ、f_lseek関数をofsCREATE_LINKMAPを指定して呼び出します。関数が成功するとCLMTが作成され、以降のf_read/f_write/f_lseek関数ではFATへのアクセスは発生しません。CLMTの先頭要素には実際に使用した(または必要となる)要素数が返されます。使用される要素数は、(ファイルの分割数 + 1) * 2 です。たとえば、ファイルが5つのフラグメントに分断されているときは、12要素が使用されます。FR_NOT_ENOUGH_COREで失敗したときは、配列サイズが不足です。

対応情報

_FS_MINIMIZE < 3のとき使用可能です。高速シーク モードを利用するときは、_USE_FASTSEEK == 1である必要があります。

使用例

    /* ファイルを開く */
    fp = malloc(sizeof (FIL));
    res = f_open(fp, "file.dat", FA_READ|FA_WRITE);
    if (res) ...

    /* ファイル オフセット5000へ移動 */
    res = f_lseek(fp, 5000);

    /* ファイル終端へ移動(ファイル追記の準備) */
    res = f_lseek(fp, f_size(fp));

    /* 3000バイト進める */
    res = f_lseek(fp, f_tell(fp) + 3000);

    /* 2000バイト戻す (ラップアラウンドに注意) */
    res = f_lseek(fp, f_tell(fp) - 2000);
/* クラスタ先行割り当て (ストリーミング ライト時のバッファ オーバーラン防止) */

    res = f_open(fp, "record.wav", FA_CREATE_NEW | FA_WRITE);    /* ファイル作成 */

    res = f_lseek(fp, MAX_SIZE);             /* 十分なクラスタの先行割り当て */
    if (res || f_tell(fp) != PRE_SIZE) ...   /* 正しくファイルが拡張されたかチェック */

    res = f_lseek(fp, DATA_START);           /* データ ストリームの記録(アロケーションディレイ無し) */
    ...

    res = f_truncate(fp);                    /* 不要領域の切り捨て */
    res = f_lseek(fp, 0);                    /* ヘッダの記録 */
    ...

    res = f_close(fp);
/* 高速シーク機能を使う */

    DWORD clmt[SZ_TBL];                    /* リンク マップ テーブル格納バッファ */

    res = f_open(fp, fname, FA_READ | FA_WRITE);   /* ファイルを開く */

    res = f_lseek(fp, ofs1);               /* 通常シーク (オープン時、cltblはNULLに初期化される) */

    fp->cltbl = clmt;                      /* 高速シーク機能の有効化 */
    clmt[0] = SZ_TBL;                      /* 先頭要素に配列要素数をセット */
    res = f_lseek(fp, CREATE_LINKMAP);     /* CLMTの作成 */
    ...

    res = f_lseek(fp, ofs2);               /* 以降、f_read/f_write/f_lseekでFATアクセスは発生しない */

参照

f_open, f_truncate, f_expand, FIL

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